本日のローズンゲンの御言葉です。
わたしはあなたに命じる。この国に住む同胞のうち、生活に苦しむ貧しい者に手を大きく開きなさい。申命記15:11
言葉や口先だけではなく、行いをもって誠実に愛し合おう。1ヨハネ3:18
10月14日に、藤井健児先生をお迎えしてのオープンチャーチが行われます。
藤井先生は、東区にある香住ヶ丘教会で長らく牧師をされていた先生ですが、視覚障がいを抱えておられる先生です。
昨日、伝道委員のK姉が藤井先生に関するこんな記事を紹介してくれました。藤井先生が書いた文章だそうです。
「2006年も押し迫った12月のある日、我が家に1通の手紙が届きました。早速、手に取ってみると、封筒にはきちんと切手が張ってあり、開封もされていませんが、中身はどうやら点字らしく、ふっくらとしており、外からも点字のようなブツブツに触れました。おまけに封筒の片隅には明らかに点字器を使ったのではないばらつきがありましたが、一人の女性のフルネームを読み取ることができ、ええ!? まさかとたいそう驚きもし、うれしさも込み上げてきて、もどかしい思いで中身を取り出しました。では、そのいきさつをお話しいたしましょう。
私は今年の3月まで福岡市から郡部の町にある幼稚園に園長として通勤しておりました。片道約1時間半の道のりを盲導犬と一緒にJRと幼稚園のバスを乗り継いで10年以上通いました。ちなみに現在のパートナーはラブラドルレトリバー9歳のメス、色はブラックの「フローリー」で、4代目。私は九州で第1号の盲導犬を持つことができ、もう39年目を迎え、深く深く感謝しております。話がちょっと横道にそれましたけれども、それぞれの相棒たちは決して横道にそれることなくしっかり誘導してくれましたが……。話は戻りますが、あの手紙が届いた10日ほど前のことでした。幼稚園の行事で、いつも利用している電車ではなく、早い時間の列車に乗りました。ラッシュアワーですごく混んでいましたが、フローリーの上手な誘導で席に着いたとたん、「この列車は途中で後ろの3両を切り離しますからご注意ください」という車内放送が流れました。
さてさて弱りました。毎日、利用している時間帯の電車なら問題はないのですが、列車によって編成が異なり、ホームの同じ位置で乗っても何両目かがはっきりしませんし、いくら優秀なフローリーでも残念ながら「今、何両目に乗りましたよ」とは言ってくれません。そこで、相席の方に尋ねましたら、実に優しく親切にこの車両は大丈夫と教えてくれました。彼女は地元高校の3年生でした。後で分かったことですが、その日は彼女もテストの最中でいつもよりずっと早く出かけて乗り合わせたわけで、お互いが日ごろの電車に乗っていたら2人の出会いはなかったねと話したことでした。おおげさに言えば、運命的な出会いを感じました。そんなわけで、丁重に礼を言って別れる時、名刺をあげておきましたが、この名刺があの手紙へと結び付いたわけです。電車の中の束の間の出会いでしたが、彼女も大きなインパクトを受けたようで、ぜひ私に手紙を出したいと思ったそうです。でも、いわゆる墨字では直接読んではもらえないし、点字は知らないしと、いろいろ思い悩んだあげく、彼女は1枚の点字一覧表を手に入れました。けれども、点字器は持っておらず、彼女が思い付いたアイデアは……。
あるメーカーから出しているボールペンのようなもので、ペンの先から液が落ち、しばらくすると固まる「もこりんぺん」とか何とかいうものを彼女は思い付き、定規のような枠もなく、普通の便せん3枚に及ぶ、まさに苦心の傑作としか言いようのない、
まごころのこもった文面を涙が出るほど感動を覚えて読み取ることができました。確かに点の大きさも位置もふぞろいで、ばらついてはいましたが、指を左右だけでなく上下にもゆっくり動かしながら読みますと、点字そのものは完ぺきで驚ききました。彼女、M・Fさんは高校卒業後、専門学校に進み、エステシャンの道を選びましたが、責任感が強く何事にも真剣に取り組み、またきれい好きできちょう面な性格で、素晴らしい人柄なのです。彼女はたとえどんな仕事についても人に優しく、また人から愛される人生を歩むことができると信じて疑いません。その上、私は見えなくて誠に残念ですが、周りの者が言うには大層美人とのことです。専門学校に入ってからアルバイトをしたいと言っていましたので、あの電車の中の彼女の親切へのささやかな恩返しにでもなればと、2カ所、口ききをしましたところ、どちらもすぐ採用され、本人にも採用してくださった方にも大変喜ばれました。実は私、もう50年もキリスト教の牧師でもありまして、彼女が結婚される時には、ぜひ教会で司式を私がしてあげて、若い二人を心から祝福したいとひそかに願っております。そのためにもますます元気でいたいと思っている今日このごろです。 」
藤井先生と一人の女子高生の出会いについて語っておられる話ですが、このようなやり取りからも藤井先生のユーモア溢れる人柄と優しさがひしひしと伝わってくるのではないでしょうか。本日の御言葉には、次のように記されています。
「言葉や口先だけではなく、行いをもって誠実に愛し合おう。」 本日の御言葉を読みながら、今回の藤井先生の文章を思い浮かべました。日々の様々な課題や煩いごとに囲まれながら、つい心がささくれ立ち、愛し合うことを見失ってしまいそうになることがあります。そんな中、私たちにとって最も大切なものは何か、いつも心に刻みながら歩んでいきたいと思わされました。ちなみに、本日、6:10からのNHKの番組で、藤井先生に関する番組、「盲導犬と見てきた光」というものが放送されます。よろしければ、ぜひ皆さん、ご覧ください。 (鈴木牧人)