本日のローズンゲンの御言葉です。
慈しみの御業を示してください。あなたを避けどころとする人を/立ち向かう者から/右の御手をもって救ってください。詩篇17:7
神は、昼も夜も叫び求めている選ばれた人たちのために裁きを行わずに、彼らをいつまでもほうっておかれることがあろうか。ルカ18:7
今朝、妻から「読んでみて」と紹介された新聞記事に驚かされました。
そこには「旧優生保護法下で強制不妊 家族は悔い苦しんだ」という記事があり、その記事の写真に写っていたのは、私も妻もよく知るI牧師だったのです。I牧師には、4歳年下の妹さんのKさんがいました。
そのKさんのことを、I牧師が若手弁護士が集うセミナーで証言したという記事でした。
Kさんは赤ん坊の頃、はしかの高熱が原因で知的障がいになりました。中学を卒業した後、学校の教師から「自立できるようにするのが親の務めだ」と説得され、Kさんは病院に就職することになりました。I牧師は、しばらくして、Kさんが病院で盲腸の手術を受けたとの話を聞き、見舞いに行きました。しかし、そこには泣いている両親の姿がありました。それを見て、I牧師は「手術は成功したはずなのに何で?」と不思議に思ったそうです。
その後、病院の一人の入院患者から「Kちゃんが毎日どんなかわいそうな生活をしているか考えたことがあるんか」と詰め寄られ、その時、初めてKさんが病院で、みんなが嫌がる汚れ仕事をさせられ、いじめられていることを知ったそうです。それを聞いたI牧師は、両親に「連れて帰ろう」と訴えました。
その時、両親から、Kさんが受けたのは実は盲腸の手術ではなくて、不妊治療だと聞かされたのです。
病院の院長からは「父親の分からない子どもを身ごもるかも知れない」言われ、「嫌だったけど、承諾してしまった。かわいそうなことをした」と両親は語っていました。それから、Kさんは自宅に戻り、両親と共に過ごしました。
両親が亡くなった後は、I牧師の家庭で一緒に過ごしました。
5年前、Kさんは天に召されました。I牧師は、これまで公の場でKさんの不妊治療のことを話すことはありませんでしたが、テレビや新聞で強制手術の問題が報じられているのを見て「Kなら話してと言うだろう」と思い、支援する弁護団に電話をかけることにしました。「父は、本当に悔しがっていた。全国に同じ思いをした人がたくさんいる。個人が『悔しかった』で片付けてはいけない。地道にしっかりと訴えていかないといけない。」
私は個人的にKさんのことも知っています。本当に素敵な方で、私が研修でI牧師のお宅をお邪魔した時には、ニコニコとずっと笑顔で私を迎えてくれました。
記事にはI牧師の言葉として「Kの存在は、言葉を超えて輝いていた。娘たちは『天使みたい』だと」ということが紹介されていましたが、その通りだと思います。そんなKさんがこんな経験をされていたなど知らなかったので、本当に驚きました。
本日の箇所には、次のように記されています。
「神は、昼も夜も叫び求めている選ばれた人たちのために裁きを行わずに、彼らをいつまでもほうっておかれることがあろうか。」
本日の御言葉を読みながら、今朝見たI牧師の記事を思わずにいられませんでした。
I牧師はきっと複雑な思いで、今回の証言をなさったのではないかと思います。
そんな中、御言葉メールで取り上げるか、どうかも迷いましたが、I牧師が語った「個人が『悔しかった』で片付けてはいけない」との言葉が心に迫ってきたので、御言葉メールに書くことにしました。
全国で同法による不妊手術を受けたのは約2万5千人に上ると言われています。
うち1万6千人が強制手術でした。福岡でも手術が364件あったことが分かっていますが、個人が特定できる資料はほとんど残っていないそうです。そのような中、ともすると、忘れられてしまう歴史になってしまいかねない問題ですが、何よりも主はこの問題で犠牲になった人々の痛みや叫びを覚えていてくださっていることを忘れないでいたいと思うのです。(鈴木牧人)