本日のローズンゲンの御言葉です。
わたしたちの神、主に並ぶものがあろうか。主は御座を高く置き
なお、低く下って天と地を御覧になる。
弱い者を塵の中から起こしてくださる。詩篇113:5-7
キリストは、神の身分でありながら、神と等しい者であることに固執しようとは思わず、
かえって自分を無にして、僕の身分になり、人間と同じ者になられました。フィリピ2:6-7
教会の牧師室に一枚の絵が飾られています。
スペインの画家バルトロメ・エステバン・ムリーリョ(1617~1682年)が描いた『蚤をとる少年』の絵です。この絵は、以前、ルーブル絵画展に出かけた際に見た絵です。
その絵に心打たれ、それ以来、牧師室に飾るようになりました。
絵には、路上生活をしている物乞いの少年が壁にもたれかかり、衣服についた蚤を取っている様子が描かれています。貧困に喘いでいる悲惨な境遇にも関わらず、少年の姿には不思議と悲惨な影はありません。もともと宗教画を描いていたムリーリョは、まるで宗教画のような気品ささえ感じられるような光と影のコントラストで、この絵を描いています。悲惨な現状をこれほど優しく、温かく描いた画家は他に見つけることが出来ないと言われています。また、この絵の少年は、幼い頃のムリーリョ自身を描いているのではないかとも言われています。実際、スペイン南部のセビリアで生まれたムリーリョは、幼い頃、両親に死に別れて路頭に迷う生活を送ることになります。
その後、姉夫婦に引き取られ二人のもとで育てられるのです。
そんなムリーニョは、宗教画で人々の人気を博すようになりますが、一方で『蚤をとる少年』のような世俗の人々を温かな眼差しで描いた世俗画を描いていくのです。
ちなみにこの『蚤をとる少年』は、ルーブル美術館に展示されるようになった最初のスペイン絵画だそうです。
本日の御言葉には、次のように記されています。
「わたしたちの神、主に並ぶものがあろうか。主は御座を高く置き、なお、低く下って天と地を御覧になる。弱い者を塵の中から起こしてくださる。」
この御言葉を読みながら、「弱い者を塵の中から起こしてくださる」との御言葉が心に留まりました。そして、ふと『蚤をとる少年』の絵を思い起こしました。
そして、ムリーリョが路上生活をしている少年の苦しい境遇をかつての自分自身の痛みと重ね合わせながら温かな眼差しで見つめていったように、私たちの主は私たちを見つめてくださるんだなと思いました。
私たちが弱く、塵の中で倒れ伏している時、そんな私たちの痛みを、ご自分の痛みと重ね合わせるようにして、温かな眼差しを注いでくださる…。
その主の眼差しと主の御手の業こそが、私たちを起き上がらせてくださるのだと思いました。(鈴木牧人)