「急いで出かけてしまいました」

ルカによる福音書1:39-45

本日の箇所は、マリアが急いで山里に向かって出かけていった様子が記されています。ルカ1:26-38には、マリアが天使ガブリエルから「あなたは救い主を身ごもったのです」と告げられたことが記されています。マリアはこの突然の知らせに驚き、戸惑います。そんなマリアに対して、ガブリエルはマリアに告げたことが本当のことであることを示すために、エリザベトの例を挙げました(1:36-37)。それゆえマリアは天使の御告げを受けた後、急いでエリサベトのところに行って確認しようと山里に向かって出かけたのです。マリアはこの時、どんな思いだったのでしょう。不安で一杯だったんじゃないでしょうか。マリアは、天使ガブリエルからイエス様誕生の知らせを聞いて、驚き、戸惑いながらも、最終的には「お言葉どおり、この身に成りますように」(1:38)と言って、ガブリエルの言葉を受け入れました。でも、心の中には、色々な思いが渦巻いていたのではないかと思います。信じよう、従っていこうという思いがある一方で、あれこれと色々なことを考えて不安になったり、落ち着かなかったり、そういう思いもあったのではないかと思うのです。それゆえ、マリアはとにかくエリサベトのところに行きたい…。行かないでいられない…。そういう思いだったのではないでしょうか。

 マリアは、心に悶々とした思いを抱えながら、エリザベトのもとに向かいました。ようやくユダの町に住むエリザベトのもとに着き、エリザベトに挨拶した時、その声を聞いたエリザベトは胎内の子がおどりました。そして、エリザベトはマリアに声高らかに「あなたは女の中で祝福された方です」(1:42)と語ったのです。この言葉を聞いたマリアはどんな思いだったでしょう。まさにエリサベトの言葉に救われるような思いだったのではないかと思います。それまで、マリアは一人でこの問題を抱え込みながら、悶々と色々なことを考えていたのだと思います。そんな中で、エリサベトから「あなたは女の中で祝福された方です」と言われ、心の底から喜んでいる姿を見ながら、マリアはそれまであった悶々とした思いがスーッと取り除かれるような、心に光が差し込んでくるような、そんな思いだったのではないかと思います。私は、この一連のクリスマスの記述を読む時、いつも心に留まることがあります。1:47-55には、マリアが歌ったとされる、有名な『マリアの賛歌』が記されていますが、マリアがこの『マリアの賛歌』をエリサベトとの出会いの後に歌ったということです。天使ガブリエルからの御告げを受けて、すぐに神様を讃美したわけではありませんでした。それはやっぱりこの時は不安があったからではないでしょうか。しかし、その後、エリサベトに出会い、「あなたは女の中で祝福された方です」と言われ、エリサベトの心から喜んでいる姿に、「ああ、天使が言っていることはやっぱり本当なんだ」「信じていいんだ」という思いにさせられたのではないでしょうか。マリアは、心の底から、御使いからの知らせを喜ぶことができたのだと思います。マリアにとって、このエリサベトの存在は本当に大きかったのだと思います。

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