「本当に重要なこと」
フィリピ1:7-11
「わたしは、こう祈ります。知る力と見抜く力とを身に着けて、あなたがたの愛がますます豊かになり、本当に重要なことを見分けられるように。」(フィリピ1:9-10)
本日の御言葉が心に迫ってきます。私たちはついうわべだけを見て、そこで物事を判断してしまうことがないでしょうか。そんな中、きちんと正しく、本当に重要なことを見分けることが本当に大事だと思うのです。1:9-10の御言葉を読みながら、一つ一つの言葉が繋がっているのではないかと思いました。パウロはまず、「知る力と見抜く力とを身に着けて」と語ります。私たちは事柄をきちんと見分けるためには何よりちゃんと知ることが大事なのではないでしょうか。ちゃんと知ることなしに、ちゃんと見分けることはできないのです。当たり前のことに思えるかも知れません。しかし、意外にこのことができていなかったりするのではないでしょうか。自分自身を顧みる時、自分の中で何もかも分かったような気になってしまって、こうだと決めつけていることがあるように思います。そうではなく、ちゃんと目の前の人の声に耳を傾け、聞こうとすること、そして、知ろうとすること…。そういうふうにできること、それが「知る力」なのではないでしょうか。それは決して当たり前ではなく、能力やセンス、忍耐力がなければできないのではないかと思います。
パウロは、知る力と見抜く力を身に着けることに加えて、「あなたがたの愛がますます豊かになり」ということも語りました。このことも重要だと思います。私たちがどれだけたくさんのことを知ったとしても、それらのことをどう受け止め、どう応えるかが問われています。知れば知るほど、複雑な色々な思いが湧き上がってくることがあるのではないでしょうか。そんな中で、私たちにとっての愛が問われる…。ますますもって豊かな愛でもって事柄と向きあっていかないと、事柄ときちんと向き合えない…。そのようなことがあるのではないかと思います。いずれにしましても、「知る力と見抜く力とを身に着け」ることと、私たちの「愛がますます豊かに」にされていくことと、私たちが「本当に重要なことを見分けられる」こととは密接に繋がっていることなんじゃないかと思うのです。
昨年の12月、30年以上にわたってパキスタンとアフガニスタンで国際支援活動をしておられた中村哲先生が天に召されました。中村先生が私たちに残してくださったものはたくさんありますし、学ぶべきことがたくさんあるのだと思います。そんな中、私の中で中村先生から教えられた大切なことの一つが人との向き合い方です。中村先生は、出会われた一人一人を本当に大切にされていかれた方だったのだと思います。そして、その人たちが語る言葉にちゃんと耳を傾け、そして、応えていかれた…。その中でされてきたのが、パキスタン、アフガニスタンでの働きだったのではないでしょうか。
今の時代、どうしても「自分は分かっている」という思いになってしまうことがあります。相手の言葉にきちんと耳を傾けることや相手のことを思いやる余裕もなくなってしまうこともあります。そんな中、本日のパウロのメッセージに心を留めていきたいと思います。