「よろこびのはじまり」

ルカによる福音書1章5-25節

本日の箇所というのは、クリスマスの出来事のプロローグと言える記述です。イエス様がお生まれになる前、しかも、マリアがイエス様誕生の知らせを聞く前、バプテスマのヨハネ誕生の知らせが告げられた場面が、本日の箇所です。このバプテスマのヨハネが、イエス様が福音宣教の働きをしていく上での道備えをする働きを担っていくことになりました。そういう意味で、福音の出来事はここから始まっていくと言えます。ですから、本日の箇所というのは、「福音のはじまり」、「神様の大いなるよろこびの出来事のはじまり」ということができるのだと思います。

バプテスマのヨハネの両親となるザカリアとエリサベトは、二人とも神の前に正しい人でした。しかし、そういうふうに生きている二人のことを思う時、彼らの歩みを想像すれば、想像するほど、二人にとって、このヘロデの時代に生きるということは、色々しんどかったんじゃないかなと思います。「こんなこと、何で赦されるの?」と思ってしまうような色々なことを見せられたりしたのではないでしょうか。ザカリアは祭司でした。ヘロデが建てあげた神殿で仕えていたのです。そんなザカリアは神殿にまつわる見たくないような現実も色々と見せられていたりしたんじゃないかと思います。見た目には金で覆われ、まばゆい輝きを放っているようですが、実際のところは本当に目を覆いたくなるような現実があったりする…。そういうものを見せられることもあったのではないかと思います。そういう状況の中で、なおもまっすぐに神様を見上げて、主の掟と定めに誠実であろうとするということは簡単なことではなかったんじゃないかと思います。

ザカリアはある時、神殿の聖所で奉仕をすることになりました。すると、ザカリアに突然、主の御使いが現れました。この御使いはザカリアに対し、「恐れることはない。ザカリア、あなたの願いは聞き入れられた」(1:13)と語ったのでした。この御使いからの呼びかけが印象的です。これまでザカリアは主を見上げて歩んできながら、色々な思いを通らされてきたのだと思います。その中では心痛めること、やりきれない思いにさせられること、そんなこともあったのではないかと思います。一方で、そんなふうに一生懸命に神様を見上げ、誠実に歩もうとしていても、自分は大勢の中に埋もれているような一人でした。そんなザカリアに主の御使いが現れ、「ザカリア」と、その名前を名指しで呼びかけられました。そして、「あなたの願いは聞き届けられたんだ」と言われたのです。ザカリアに対し「神様は、あなたをちゃんと知っているんだよ。あなたを心に留めておられるんだよ。あなたの思いも神様はちゃんと分かっているんだよ。そして、その願いを神様は聞き届けられたんだよ」というメッセージが語られたのです。

「福音のはじまり」、「神様の大いなるよろこびの出来事のはじまり」は、この主の御使いとザカリアの出会いから始まったのだということを覚えていたいと思います。

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