「シャロームを作り出す人(平和は周辺から)」
詩編147:12-14
「あなたの国境に平和を置き/あなたを最良の麦に飽かせてくださる」(147:14)。
本日の箇所に語られている「あなたの国境に平和を置き」という言葉に注目をしたいと思います。「国境」付近とか、「地境」のあたりというのは、通常、平和というものが一番脅かされる場所なのではないでしょうか。戦争の際、一番戦場となりやすいのは、国境付近なのだと思います。そんな国境付近でさえ、平和で満ち満ちている…。そこに住む農夫たちが敵からの侵入にびくびくして過ごすことなく、安心して、田畑を耕し、作物を育て、最良の麦を収穫することができる…。それほどに平和の様子が語られていることを思います。
平和というのは、自分たちが生きている、その場所だけが無事で争いがなければ、それでいいということではないのだと思います。「国境」付近、「地境」のあたり、そこに平和が実現している中でこそ、私たちは、本当の平和ということが言えるのです。
今から6年前、長崎にあるスターバックスコーヒーにこんな文章を掲げていたそうです。
「皆さんが飲んでいるコーヒー。その豆のほとんどがアフリカ、中東、ラテンアメリカなどの政情の不安定な地域から輸入をしています。“おいしいな”と感じているそのコーヒーが内戦や紛争によって来年から飲めなくなることもあるのです。“ほっとする”“のんびり”“落ち着く”という言葉で表されるコーヒーは、実は世界から、危険な地域からやってくることもあります。戦争と平和というとあまり身近に感じないかもしれませんが、今、飲んでいるコーヒーやフラペチーノが飲めなくなるかもしれないと思うと平和について考えるひとつのきっかけになるのではないでしょうか。今年長崎は戦後72年目の夏を迎えます。あなたにとって“平和”とは何ですか?」
色々なことを考えさせられる言葉です。私たちが生活している今、この場所だけが平和であるなら、それでいいというのではなく、周りの国々の平和と、私たちの大切な日常は深く繋がっているんだということを教えてくれている言葉だと思います。現在、私たちは、このことを、本当に身をもって経験しているのだと思います。現在のロシアによるウクライナ侵攻のことを思う時、そう思います。ウクライナの平和が脅かされていることになり、私たちの日常生活には少なからず影響が及んでいます。物価の高騰もまさにそうです。ウクライナの平和と、私たちの日常が深く繋がっていることをひしひしと感じています。
私たちがそのような視点を忘れ、自分たちの身近なことばかりを考えて、そこが守られているなら、それでいいとしてしまうなら、それは危ういことです。少し前には私たちにとって周辺の事柄だったはずの出来事が、知らない間に、私たちの身近に及んでしまうこともあるのです。その時には、どうしようもない事態になってしまうこともあります。周辺の出来事と思えるような事柄を、私たち自身の問題として向き合いながら、関心を持ち、私たちなりにできることを模索しようとしていくこと…。それが結果として、私たち自身の平和に繋がっていくのだということを覚えていたいと思います。